細川事務所通信

令和5年1月号 Vol.138

会社の昼休みに机で寝ていたら上司に怒られた…休憩時間中の昼寝は解雇理由になり得るのか?

労働者の権利が保障されている現在社会において、理不尽な理由で職が奪われることはあってはならない。もしも、昼休みに仮眠をとっていたこと理由で解雇されたならば、それは法的に問題ないのだろうか?実際の相談に答える形で、弁護士の竹下正己が解説する。

【相談】

 私の勤めている会社は、ワンフロアに20名ほどの社員が机を並べています。会社の昼休みは12~13時と決まっているので、私はランチを食べた後、午後の始業時間まで机に伏して昼寝をする習慣があります。先日、それを見た上司から「会社で寝るなんて何事だ。そのような勤務態度ではクビになってもおかしくない」と怒られました。でも、昼休み中にしていることなので納得できません。昼休み中に昼寝をするのは解雇の理由になるのでしょうか。(東京都・40才・会社員)

【回答】

労働基準法上、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を労働時間中に、原則として職場で一斉に与えるのが使用者の義務です。
 さらに、使用者は休憩時間を労働者の自由に利用させなければなりません(休憩時間の自由利用)。休憩時間の自由利用とは、休憩時間中は、使用者の指揮命令の下における服務による拘束を離れ、この時間を自由に利用することを意味します。疲労回復のためには労働者の自由な休憩が必要だからです。
 しかし、労働義務がなくても休憩時間は、始業時間と終業時間の間ですから、いわゆる拘束時間として、完全に自由であるとまではいえず、使用者が「事業場の規律保持上必要な制約を加えることは休憩の目的を害しない限り差し支えない」と解釈されています。
 その結果、休憩時間中でも事業所内における行動については、使用者の事業所等の管理権に基づく適法な規制に従う義務があることになりますが、労働者が休憩時間中も勤務場所にとどまらざるを得ない場合には、使用者の管理権に基づく労働者の行動規制も無制限ではありません。
 そして、管理上の合理的な理由がないのに不当な制約を課する場合は、労働基準法違反になり、管理権の乱用として効力を否定されます。
 その反面、管理権の合理的な範囲内の規制である限りは、労働者の行動規制は有効として拘束力を有し、労働者が違反した場合には、規律違反として懲戒されてもやむを得ないとされています。
 しかし、休憩時間の仮眠を禁じる就業規則を見たことはありません。仮にあっても、休憩後の業務に支障が生じるような特別な職種でない限り、短時間の仮眠を禁止する合理性はないと思います。
 実際、夜勤労働者が休憩時間中に仮眠したことが服務規律違反になるかどうかが問われた案件がありました。その事例では、休憩時間が終わったときに起こしてもらう態勢を整えていれば、休憩時間中に仮眠することは労働者の疲労回復を目的とする休憩時間の自由な利用の限界を超えるものではないとして、裁判所は規律違反を理由とする懲戒処分を無効にしました。
 あなたの職場は、社員が机を並べる事務所であり、昼休み中でも顧客が出入りするような店舗ではないと思われます。昼休みに仮眠したからといって、会社の業務に不都合はないはずで、禁止するのは間違っているといえます。

2022年9月3日(月)19:15配信 gooニュース引用 ※女性セブン2022年9月8日号

 今の時代、休憩時間の自由利用の原則を知らずに下手なことを言うと、パワーハラスメントだと反論されてしまう可能性もありそうですね。従業員が良いパフォーマンスを発揮できるように、休憩時間は十分にリフレッシュできる環境である必要があります。

 休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることを保障される時間であり、単に作業に従事しない「手待時間」は含まれないことにも注意が必要です。例えば、「早出や昼休憩中の電話番」「小売業・飲食業などの店番」「運送業ドライバーの荷物積み下ろし待ち時間」「タクシー運転手の客待ち時間」などは「手待時間」に当たり、休憩時間とはなりません。もしこのような手待時間があった場合は、労働時間に当たりますので、労働者から賃金の請求をされた場合は拒むことはできません。自社の雇用管理の中に「手待時間」がないかを確認して、心当たりがある場合は見直しをしてみてはいかがでしょうか。

1月給与の注意事項

  1. 源泉徴収税を半年に一度の納付にされている会社は、令和4年7月1日から令和4年12月31日までに徴収した源泉所得税を令和5年1月20日までに納付して下さい。
  2. 給与支払報告書の提出は1月31日までです。
  3. 労働保険料を分納している場合、第3期の納付期限は1月31日までです。(労働保険事務組合に業務委託されている事業所の場合は、1月20日に労働保険料の口座振替があります。)

(所長:細川 知敬)

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