細川事務所通信

令和2年11月号 Vol.112

非正規2000万人時代 待遇どう改善 格差「不合理」判決「企業努力すべきだ」

 非正規労働者の待遇格差をめぐる最高裁の判決が相次いだ。15日、日本郵便の契約社員が正社員との待遇格差の是正を求めた訴訟は、年末年始勤務手当や扶養手当などを支払わないのは不合理だと認めた一方、非正規労働者の退職金とボーナス(賞与)をめぐる13日の訴訟は、職務内容の差などを理由に不支給でも「不合理ではない」と判断した。多様な人材が集まり、いまや国内で2千万人を超える“非正規”という働き方に改めて注目が集まっている。その待遇は、どう考えていけばいいのか。

 雇用期間に定めがない正社員に対し、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員といった非正規労働者は、一般的に有期契約。労働時間が短いケースもある。

 総務省の労働力調査によると、令和元年平均の非正規労働者は前年から45万人増加し2165万人で、労働者全体の約4割を占めている。  ~中略~

 労働者側から見ても、勤務の柔軟性という魅力などから、あえて非正規を選ぶ流れもあった。同調査で、なぜ非正規という働き方を選んだか理由を尋ねたところ、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が625万人(30.6%)と最多だった。

 一方で浮上してきたのが同じ仕事をしていても給与などが異なるという待遇格差だ。昨年4月には、不合理な待遇格差をなくすことなどを目的とした働き方改革関連法が施行。大企業では今年4月から「同一労働同一賃金」が導入され、中小企業は来年4月から適用されることになっている。

 もっとも、13日の最高裁判決でポイントになったのは、正社員と非正規労働者との間にある業務内容や責任度合いの差だった。国内の大半の企業は、転勤などを含む人事異動など、多くの非正規社員にはない勤務条件を課している。

 日本女子大の原ひろみ准教授(労働経済学)は、「正社員同士でも基幹的な仕事か否かで給与の差があるように、責任の重さなど仕事に違いがあれば、正社員と非正規労働者で賃金に差が出ることはある」として上で、「同じ仕事内容にもかかわらず雇用形態の違いで金銭報酬や福利厚生、キャリアアップの機械などの処遇が異なるのが大きな問題。企業は非正規労働者への不合理なしわ寄せを改善する努力をすべきだ」と話す。  ~以下略~

2020年10月16日(金)9:35 産経新聞 より引用

「手当や休暇の格差は不合理」「賞与・退職金なしは不合理ではない」10月13日・15日に最高裁は非正規労働者と正社員の待遇格差をめぐる訴訟で異なる判決を出しました。

 この判決によって、非正規労働者にも「扶養手当」「年末年始勤務手当」「年始期間祝日給」「夏季冬期休暇」「有給の病気休暇」を与えるように命じられました。こうした一連の同様の判決などにより、正社員に支払われている諸手当や休暇、福利厚生などの制度については、非正規労働者にも支給し、制度の利用も認めなければならないようになります。

 これらに対して、賞与と退職金は非正規労働者には支払わなくても違法ではないという、逆の判断がなされました。しかし今回の判決がすべての会社に当てはまるとは限らないので注意が必要です。実際にボーナスの判決でも、退職金判決でも、個々の企業の賞与や退職金を支給する目的や趣旨を検証した結果、正社員だけに支給して、非正規労働者に支給しないのは不合理だと判断される可能性がある旨の説明がされているようです。

 また大企業には今年の4月から施行されている「改正パートタイム労働法」ですが、その第14条2項には、非正規労働者から「正社員と比べて待遇の違いの説明」を求められたとき、会社はその違いについて説明しなければならないと定められています(待遇格差の説明義務)。もし会社が説明責任を十分に果たせない場合は、その格差は不合理だと判断されてしまう可能性もあるということです。

 正社員と非正規労働者の混在する会社においては、両者の労働条件を見比べて不合理な格差がないかどうか検証する必要がありそうです。改正パートタイム労働法の中小企業への適用は2021年4月からとなります。

10月給与の注意事項

  1. 年末調整の準備をしましょう。
  2. 10月から最低賃金が改定されます。新型コロナウィルスの景況により東京都は据え置きの1,013円、千葉県925円、埼玉県928円となります。

ひとこと

 今月は割愛させて頂きます。

(所長:細川 知敬)

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