ネット通販「アマゾン」の荷物の宅配を運送会社から業務委託された個人事業主のドライバーについて、運送会社から指揮命令を受けており、事実上の雇用関係にあたるとして、労働基準監督署が運送会社に労働基準法違反で是正勧告していたことがわかった。宅配荷物の増加で、個人ドライバーに業務委託する動きが物流業界で広がる中、違法とする認定が明らかになるのは異例。今後影響が広がる可能性がある。
関係者によると、運送会社は、「アマゾンジャパン」の荷物の配送を受託する複数の協力会社のうち最大手で、東証プライム上場の「丸和運輸機関」(埼玉県吉川市)。春日部労基署(埼玉県春日部市)が1月に出した勧告では、同社が宅配を業務委託している個人ドライバーの一部について、同社の労働者にあたると認定したうえで、労基法で定められた労使協定を結ばずに法定労働時間(1日8時間)を超えて働かせたなどとしている。
同社は、個人ドライバーと、1日あたりの固定料金で宅配を業務委託。しかし、ルートを指定したり、予定外の配達を急に指示したりしていたほか、制服の着用も求めていた。また、報酬の一部を「事務管理料」として天引きしていたという。
業務委託では、報酬は成果に対して支払われる。業務の進め方は個人事業主の裁量に任される。企業が指揮命令すれば、雇用関係にあるとみなされ、企業は労働条件を書面などで明示することが必要になる。怠れば労基法違反になる。
労基署は是正勧告を出した企業に改善内容をまとめた報告書の提出を求める。
同社の昨年3月期の売上高は1121億円。うち23.4%がアマゾン関連という。
同社は読売新聞の取材に、委託する個人ドライバーについて「労働者性は認められない」とする一方、是正勧告については「お答えできない」としている。
物流業界では、宅配荷物の急増と人手不足を背景に、個人ドライバーに委託する動きが近年急拡大している。国土交通省によると、軽貨物運送業者数は2016年度は約16万業者だったが、20年度には約20万業者に増え、同省は、この大半が個人ドライバーとみている。
2022年5月29日 読売新聞オンライン より引用
労働基準法第9条では、「この法律で「労働者」とは、事業の種類を問わず、事業又は事務所に使用されるもので、賃金を支払われる者をいう。」とされており、法文上の基準は明確ではありません。通常は、労働者性の判断は、「使用従属関係の下で労務提供と言えるかどうか」という観点から行われるものとされ、雇用、請負等の形式にかかわらず、その実態に基づいて判断されるべきとされています。
その具体的な判断についてですが、「業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容」「支払われる報酬の性格・額」「業務指示等に対する諾否の自由の有無」「時間的及び場所的拘束性の有無・程度」「労務提供の代替性の有無」「業務用機材等機械・器具の負担関係」「専属性の程度」etc、その他諸般の事情を総合的に考慮して行われることになります。(新宿労基署長事件-東京高判平成14年7月11日)
1社専属で業務請負(専属性の程度)を行っているドライバーで、「1.ルートを指定したり、予定外の配達を急に指示したりしていた。」「2.制服の着用も求めていた。」「3.報酬の一部を「事務管理料」として天引きしていた。」などの要素を見ると、使用者(会社)との間で事実上の使用従属関係にあるように見受けられます。はた目からみて「労働者」と言われても仕方がないような働かせ方をしている場合、上記の記事のような指摘を受けても仕方がないかもしれません。
ただ傭車運転手のような、零細・個人事業主の労働基準法上の労働者については、これを否定されるようなケースも多いようです。本件についても、社会的な影響がとても大きいと思われますので、労働者性を判断するその他の要素もよく検討され、総合的に考慮して最終判断がなされるべきかと思います。
6月給与の注意事項
- 一般事業所の労働保険料の年度更新の申告・納付期限は7月11日(月)です。(提出期間は6月1日から7月11日)
- 6月の給与の支払いが終わりましたら、算定基礎届の準備をしましょう!!届出期限は7月11日(月)です。(提出期間は7月1日から7月11日)
- 今月支払いの給与から、住民税特別徴収額が改定されます。給与計算の際にはお間違えの無いように、気を付けてください。
(所長:細川 知敬)