細川事務所通信

平成30年3月号 Vol.80

「同期に遅れたくない」インフルなのに黙って出社、バレたら処分を受ける?

インフルエンザと診断されたけど、同期に差をつけられたくないから出社したい――。インターネット上のQ&Aサイトにこのような相談がありました。相談者は新卒社員。インフルエンザと診断されてしまいましたが、「同期に遅れをとりたくない」と出社を考えています。「休んだ後出社したら、同期がバリバリ働いていた、なんてことになっていたら悔しい」、「マスクとかで隠したら、インフルエンザだってバレないのでは?」とこっそり出勤しようとしています。

インフルエンザだと診断され、医師に出勤しないように言われたにも関わらず、勝手に出社したことが発覚した場合、会社から処分を受ける可能性はあるのでしょうか。近藤暁弁護士に聞きました。

●懲戒処分が有効となる3つの要件

そもそも、会社の懲戒処分はどのような場合に有効になるのでしょうか? 「(1)『使用者が労働者を懲戒することができる場合』で、(2)その懲戒処分に『客観的に合理的な理由』があり、(3)『社会通念上相当』と認められることが必要です。(労働契約法15条)そして、(1)『使用者が労働者を懲戒することができる場合』という要件との関係では、懲戒事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則で明記されていることが必要です。今回のケースとの関係では、懲戒事由として、就業規則にどのような根拠規定が設けられているのかを確認する必要があります。」

●就業規則に規定されている場合が多い

実際は、どのような規定が設けられている場合が一般的なのでしょうか。 「就業規則には、病者の就業禁止や報告義務が規定されている場合が多いでしょう。例えば、『会社は、病毒伝播のおそれのある伝染性の疾病(新型インフルエンザおよびその疑いを含む。)に感染した従業員については、就業を禁止する』、『従業員は、伝染病の疾病(新型インフルエンザおよびその疑いを含む。)に感染した場合またはその疑いがある場合、直ちに所属長に報告しなければならない』といった規定です。また、懲戒事由として『就業規則に違反する行為があったとき』などと定められていることでしょう。」

●インフルエンザで出勤すると懲戒処分を受ける可能性も

では、インフルエンザで出勤すると、処分が有効になるのでしょうか? 「先ほど説明したような懲戒事由が定められている場合、今回のケースは、就業規則に定められた懲戒事由に該当することになり、(2)懲戒処分に『客観的に合理的な理由』があるといえるでしょう。ただ、懲戒処分は、(3)『社会通念上相当』であることも求められます。そのため、懲戒処分の種類・程度が重すぎるような場合には、懲戒処分が無効となることもあります。」 インフルエンザでの出勤が発覚すると、「同期に遅れをとる」どころではない話になってしまう可能性があるだけに、医師の診断にしたがって、しっかり休養すべきでしょうね。

YAHOO!ニュース 弁護士ドットコム 平成30年2月2日(金)9:45配信

 インフルエンザに罹っても「同期に遅れを取りたくない」から出社したいなんて言ってくれる、やる気のある従業員がいたらいいですよね!まあ、インフルエンザをうつされるのは嫌ですが…。

 上記記事のような場合で従業員に課せられる懲戒処分としては、初犯であれば「けん責(始末書を提出させて、将来を戒める処分)」処分程度が妥当と思われますが、ケースに応じた対応になると思います。

 それよりも会社として大切なことは、他の従業員に被害を派生させないようにする「安全配慮」かと思います。それでは、インフルエンザで出勤停止命令を出すことができるのでしょうか?

 就業規則の規定で「伝染病」に罹った従業員は就業を禁止するなどの記載がありますが、いわゆる「風邪やインフルエンザ」は、現在では「感染症」と言い、「伝染病」とは言いませんので、注意が必要です。

 では、感染症で会社が出勤停止命令を出せるのは、どのような場合でしょうか?まず、関連する法令ですが、下図のようになっています。感染症に罹った従業員への出勤停止命令ですが、法的に出勤が禁止されるものと、会社が職場内の安全配慮のため禁止するものとに分かれます。

法令・条文 出勤停止命令者 就業規則記載の要否 休業手当支給の要否
感染症予防法第18条 法による強制及び都道府県知事 不要 不要
労働安全衛生法第68条 法による強制 不要 不要
労働契約法第5条 労働契約法第5条 必要 必要

 法的に出勤停止させるべき感染症は、厚生労働省令により定められています。この感染症に該当する場合、休業手当の支払いも、給与の支払い必要ありません。

 それでは「インフルエンザは?」というと、新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ(H5N1)は、法による出勤停止命令の対象となりますが、従来からあるインフルエンザ(いわゆる季節性インフルエンザ)は、法による出勤停止命令の対象外です。

 通常のインフルエンザで出勤停止させる場合は、「就業規則への記載が必要」で「休業手当」の支払も必要になりますのでご注意ください。

3月給与の注意事項

  1. 3月から健康保険料・介護保険料が変更になります。給与計算の際には間違いのないように注意してください。

ひとこと

 暦の上では春になりました!早く暖かい陽気になるのが楽しみです。ピークは過ぎたかと思われますが、インフルエンザが流行っていますので、体調管理に注意をしてください。

(所長:細川 知敬)

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