細川事務所通信

平成28年10月号 Vol.63

「和食さと」「すし半」のサト、違法残業月111時間 容疑で書類送検


 「和食さと」「すし半」「さん天」などを展開する飲食チェーン大手、サトレストランシステムズ(大阪市中央区、東証1部)が、従業員に違法に時間外労働をさせ、残業代の一部を支払わなかったとして、大阪労働局は29日、労働基準法違反の疑いで、法人としての同社とさん天事業推進部長、店長4人を書類送検した。

 労働局によると、サトは時間外労働の限度(月40時間)に関する労使協定(三六協定)を店舗ごとに結んで労働基準監督署に届け出ていたが、労働者代表の選出に不備があり、有効な協定として認められていなかった。

 書類送検容疑は平成27年、本社と大阪府内のすし半、和食さと計4店で、従業員7人に対し最長で1カ月111時間~49時間の時間外労働をさせ、うち2店では3人に割増賃金の一部(計約30万円)を所定支払日に支給しなかったとしている。

 同社は調査委員会を設置して全店舗で未払い賃金を精査。延べ653人に26~27年分の計約4億円を支払った。

産経新聞 9月29日(木)16時29分配信

 労働基準法により、使用者(会社)は労働者の労働時間を適切に管理する責務を有しています。しかし労働時間を管理しているとは思えないような事件が、未だにたびたび報道されています。長時間労働をさせると事業主にはリスクばかり付きまとうようになりますので、ここで再確認をしておきましょう。

【過労死ラインは80時間/月】

 現在の労働行政では、一応、過労死ラインは80時間/月(月に20日出勤する場合、1日4時間以上の残業)とされています。これは健康障害の発症2~6カ月間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合に、健康障害と長時間労働の因果関係が認められやすいという目安です。

【過労死ラインを超えて働かせることは違法では?】

 労働基準法は、長時間労働について一定のルールを設けていますので、同ルールに違反した場合は会社による残業指示は違法となります。長時間労働についてのルールは下記のとおりです。

【残業させるには三六協定を結ぶ必要がある】

 従業員を残業させるには、会社と従業員との間で「三六協定」という協定を結ばなければなりません。労働基準法は原則として残業を禁止しているので、三六協定を結ばずに残業させるのは違法となり罰則が科せられることもあります。

【正規の残業代を支払わなければならない】

 時間外労働をさせる場合は、通常の賃金の25%以上割増した賃金を支払わなければならず、適正に残業代を支払わない場合は違法となり罰則が科せられることがあります。平成22年改正によって、一月の時間外労働が60時間を超えると、50%以上の割増賃金を支払う必要があります。(一定規模未満の中小企業を除きます。)

【脳血管疾患・心疾患・精神疾患や過労自殺】

 過労による身体への影響は、主に脳と心臓に出てきます。また、仕事へのプレッシャー、パワハラなども重なり精神疾患から自殺をしてしまう人も出てきます。睡眠不足、過労により居眠り運転・風呂場での事故死なども過労死として認定された例があります。

【最悪の場合、損害賠償責任を負うことに…】

 平成20年3月1日から施工された労働契約法第5条には、使用者の労働者に対する「安全配慮義務」が規定されています。昨今は安全配慮義務違反での訴訟が提起され、使用者側に重い損害賠償責任を課す判決が非常に増えています。

 「安全配慮義務」などというと難しく思えますが、時間外労働について平たく言うと下記のようなことです。

  1. 労働基準法を遵守し、原則として時間外労働はさせない。
  2. まして過労死ラインに掛かるような働かせ方はしない。
  3. 残業させる場合には、三六協定を結び、協定通りの運用をする。
  4. 残業代は会社のペナルティと認識し、正規の支払いをする。
  5. 労働者とのコミュニケーションを円滑にし、体調などの配慮をする。

 日本の場合は、景気が良い時に全員が残業して乗り切り、景気が悪い時は正社員のクビを切らなくても済むように、多くの企業で慢性的な残業が行われ、国も事実上こうした経営手法を後押ししていました。一概に悪しき慣習とは言いきれないものの、十分に注意が必要です。

10月給与の注意事項

  1. 9月より厚生年金保険料率が改定になっています。
  2. 平成28年都道府県別最低賃金が確定しました。
    最短で平成28年10月1日からの適用になります。
    最低賃金をベースにパート・アルバイトの給料を決めておられる事業所様はご注意下さい。

ひとこと

 台風が多く、日照時間が少ないなと感じております。毎週、台風が来るとせっかくの秋も楽しめないで困ってしまいますね。今月は少し穏やかな陽気になればと願っております。

 今年も残すところ3カ月となりました。そろそろ各種控除証明書がお手元に届き始めて、年末調整の準備を考える時期になりました。昨年から運用が始まっておりますが、年末調整事務には「マイナンバー」が必要になります。昨年、お取り付けが上手くいかなかった従業員様がいらっしゃいましたら、今年はしっかりと案内をして、「マイナンバー」のお取り付けをしてください。

(所長:細川 知敬)

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