細川事務所通信

平成29年5月号 Vol.70

「新卒社員の3割が3年で辞める」はなぜ30年間変わらないのか


~中略~ せっかく採用した新入社員(大卒者)の3割が3年で辞めているという事実がある。人材不足の状況にあって、どうしてこのような「ミスマッチ」が起きているのだろうか。

【自社色に染められる企業が新卒採用を行う理由】

 そもそも、日本ではなぜ多くの企業が新卒者の定期一括採用を行っているのか。その理由は、大きく分けて三つある。一つ目は、企業が成長・発展し続けていくためには、組織の新陳代謝を図らなくてはならないこと。二つ目は、年次管理がベースとなっている日本では人員構成上、ピラミッド組織の維持が必要であること。三つ目は、新卒採用なら安いコストで人材を調達できるうえ、まだ何物にも染まっていないので、自社の価値観(経営理念・組織風土)をしっかりと共有できること。そのため、毎年4月に大量の学生が労働市場に供給されることを前提として、多くの日本企業が計画的な採用活動をおこなっているのだ。 ~中略~

 いずれにしても新卒採用を行う際は、将来の事業展開を踏まえた「計画性」が重要である。経営戦略から導かれた要員計画の下、計画が策定されなければならない。特にベンチャーや中小企業などでは、新卒採用がきっかけで、経営戦略がより具体性のあるものとして言語化され、実戦へと結び付いていくことがある。そういう意味でも新卒採用は、経営トップ自らが取り組むべき重要課題の一つと言えるだろう。

【入社3年で「3割」が辞めるバブル期から変化がないミスマッチ】

 一方で、厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」によると、新入社員(大卒者)の3割が、入社後3年以内に最初の会社を辞めている。この状態はバブル時代から変わることなく、1987年以降、「新卒3年目までの離職率」は概ね25~35%の範囲で推移している。キャリア採用の浸透とともに転職に対する抵抗感が少なくなったことや、転職手段が増え、転職自体が容易になったことなどがその理由として考えられる。その他にも、近年の「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばれる若者の志向の変化や時代背景など、さまざまな見方がある。

 「新卒3年目までの離職率」がバブル時代から現在まで変わらないという事実は、入社した企業が構造的な問題を抱えていること、また、採用選考のあり方に問題があることも同時に示している。なぜこのような採用の「ミスマッチ」が起きてしまっているのだろうか。 ~中略~

~中略~ 退職理由で最も多かったのは、「キャリアの成長が望めない」25.5%。その後を僅差で「残業・拘束時間の長さ」24.4%が続き、以下、「仕事内容とのミスマッチ」19.8%、「待遇・福利厚生の悪さ」18.5%、「企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ」14.0%などが上位に挙がっている。

 この結果から分かるのは、「キャリア成長が望めない」「残業・拘束時間の長さ」「企業の方針や組織大生・社風などが合わない」など、採用選考の段階で学生に企業の内実をきちんと伝えきれなかったことが退職の大きな理由になっていること。これは明らかに、企業側の「情報開示」の姿勢に問題がある。

~以下略~

『日本の人事部』編集部 ダイヤモンド・オンライン4月20日(木)6:00配信

 採用のミスマッチは「企業側の情報開示の姿勢に問題がある」という部分に、グッと引きつけられてしまいました。特に中途採用が多い中小企業にとっては、「自社の悪い部分まで情報開示したら誰も採用できないよ…」という声が聞こえてきそうですが、果たしてそうでしょうか?

 労働基準法第15条には、「使用者(会社)は、雇入れの際に一定の労働条件を明示しなければならない。」と定められています。特に絶対的明示事項とされる労働条件については、「書面の交付」が義務付けられています。(始業・終業の時刻、残業の有無、休憩、休日、休暇、賃金に関することなど)

 使用者(会社)としては、「できるだけ安い賃金(経費)で、たくさん働いて欲しい」と考えますが、労働者は「できるだけ高い賃金で、働く時間は少なくしたい」と全く逆のことを考えているでしょう。 単純にはお互いに真逆のことを考えている訳ですから、このお互いの溝を埋める役割を「情報開示」が担ってくれると私は思っています。「情報開示」の第一歩としては、上述しました「労働条件の明示」をしてみてはいかがでしょうか?(労働条件の明示とは、「労働条件通知書」や「雇用契約書」を作成・交付することです。)

 数年前の大阪南労働基準監督署では「労働者から権利救済(申告)の申し出があった会社(労使トラブルのあった会社)について、「労働条件の明示」がされていたか」の調査を行っています。なんと労働者に対して「労働条件の明示」をしていなかった会社は、全体の83.3%にも上っており、これがトラブルの要因となっていると推測されます。

 「労働条件の明示はこれから…」と思っている事業主様も、できるところからで良いので、「情報開示」の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

5月給与の注意事項

  1. 労働保険の年度更新(7月)がありますので、賃金台帳に不備がないかチェックをお願い致します。(一般事業所)
  2. 4月から雇用保険料率が引き下げとなっています。4月分(5月支払い)の給与計算をする際には、間違いの無いようにご注意ください。

ひとこと

 GWは有意義に過ごせましたか?だんだん暖かく過ごしやすい陽気になり、公私ともにとても良い季節になりました!

 さて今年の春は給与計算業務での改定が多かったので、お間違えのないように作業をなさってください。3月分給与から健康保険料率・介護保険料率が改定、4月分給与から雇用保険料率の引き下げ、子供・子育て拠出金が引き上げになっています。ご不明点やお手伝いできることがありましたら、いつでもご連絡ください。よろしくお願い致します。

(所長:細川 知敬)

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