細川事務所通信

令和5年3月号 Vol.140

フリーランスのトラブル相談が急増 「110番」開始2年で1万件超

フリーランスとして働く人たちの労働相談に弁護士が無料で応じる「フリーランス・トラブル110番」への相談件数が急増し、開設から2年余りで1万件を超えた。フリーランスの働き方が様々な業種に広がる一方、発注元に対する立場の弱さから報酬不払いなどのトラブルが多発。まるで「社員」のように働いているのにフリーランスとして扱われ、労働基準法で守ってもらえない「偽装フリーランス」の存在など、新たな課題も浮かんでいる。

 トラブル110番は、厚生労働省から委託を受けた第二東京弁護士会が手がけ、労働問題に詳しい弁護士らがメールや電話、対面などで相談に応じている。

 2020年11月に始まり、21年度の相談件数は月350件程度だった。それが22年度は月500~600件ほどに増え、昨年末までの相談件数が累計で1万541件に達した。「相談の多さは予想以上だ」と担当弁護士は驚く。

 相談で最も多いのが、支払の遅延や未払い、一方的な減額など「報酬の支払い」に関するもので、全体の32.8%を占める。次いで、契約条件が不明確だったり契約書がなかったりするといった「契約内容」に関する相談が17.3%あった。

 相談者を業種別でみると、配送関係が最も多く、システム開発やデザイン関係、建設や美容関係、ライターなど多岐にわたる。年代別では、30代(28.3%)、40代(25.7%)、20代(21.5%)と続いた。

 厚労省の担当者は「今まで見えていなかったフリーランスのトラブルが可視化されてきている」と話す。トラブル110番に開設時からかかわってきた山田康成弁護士は、偽装フリーランスについて「今後ますます増えるおそれがある」と警告している。

 トラブル110番(0120・532・110)は、土日祝日を除く午前11時半~午後7時半。相談内容に応じて、労働基準監督署や公正取引委員会などの関係機関も紹介する。(遠藤隆史)

2023年2月13日(水)12:00配信 朝日新聞DIGITALから引用

 業務をアウトソーシングするときの契約類型として「請負契約」や「委任契約」などがあります。「請負契約」とは、仕事の完成に対して報酬を支払うという契約で、典型的な例として「建物の設計、建築」などが挙げられます。一方、「委任契約」とは、業務の遂行を依頼する契約で、例えば自身の訴訟行為代理を弁護士に依頼するなどです。

 よく聞く言葉で「業務委託(契約)」がありますが、業務委託(契約)とは「請負契約」「委任契約」を含めて、業務を第三者に依頼する場合全般を指す言葉です。

 フリーランスの方は「業務委託契約」を結んで仕事をしますが、形式上業務委託契約としつつ実態は雇用契約と変わらない働き方をしていることがよくみられます。業務委託契約は「雇用責任がない」ので、発注者にとって都合の良いことが多いです。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の負担はありませんし、労働基準法などの労働関係法令が適用されませんので、残業代の支払い、有休休暇の付与、最低賃金の適用もありません。また労働者の場合は給与を下げたり、解雇することは簡単にできませんが、業務委託の場合は簡単に契約を終わらせることもできます。

 ただし、フリーランスの方自身に次のような実態がある場合は、発注者と雇用関係があると判断されます。「1.仕事の依頼に対して引き受け判断の自由があるか?」「2.仕事の進め方について指示があるか?」「3.遅刻や欠勤の場合に報酬が減らされるか?」「4.超過勤務した場合に報酬を支払うか?」「5.仕事に必要な機械や道具を借りている」「6.一社専属で仕事を受けている」「7.発注者の名称の入った、ヘルメットや作業着を着用している」など。

 業務委託契約ですと労災事故が起きた場合は発注者の従業員ではないので、発注者の労災保険が使用できませんが、発注者の従業員であると判断されたときは、発注者の責任で補償をする必要があります。また所得税や社会保険料も会社が支払い義務者になるので、発注者の従業員と判断された方からこれらを控除していなくても、支払わなければならない可能性があります。実態に合った契約関係となっているかどうか十分に確認が必要です。

3月給与の注意事項

  1. 3月分(4月納付分)から健康保険料(東京都9.81→10.00%、千葉県9.76→9.87%、埼玉県9.71→9.82%)・介護保険料(1.64→1.82%)が変更になります。給与計算の際には間違いのないように注意してください。
  2. 4月分保険料から雇用保険料率が改定されます。一般の事業15.5/1000(労働者負担分は6/1000)、建設の事業18.5/1000(労働者負担分は7/1000)にそれぞれ改定されます。給与計算の締日が4月1日以降で当月払い(4月支払い)の会社の場合は、4月支払分給与から雇用保険料率変更になるのでご注意ください。今年も年度更新では概算賃金の設定に注意しましょう。

(所長:細川 知敬)

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