ローソンは50代の男性社員が9年間で4億3000万円を横領していたとして、30日付で懲戒解雇した。
解雇されたのはIT部門に勤務していた50代の男性社員で、2011年から9年間で計4億3000万円を私的に流用していた。
取引先1人と共謀して業務委託料を水増ししていたということで、社員は「流用した金は2人で山分けした。飲食などに使った」などと話しているという。ローソンは社員らを刑事告訴する方針。
日本テレビ系(NNN) 2019年8月30日(金)20:10最終更新
9年もの間、横領を続けられたこと、またその金額もかなりの額で驚きました。1カ月換算すると約400万円の横領で、これを飲食などに使ったということです。懲戒解雇は免れないでしょう。
ところで懲戒解雇を含めて「懲戒」という言葉を耳にすることがありますが、会社においてどのような場合に懲戒処分がなされるのか「懲戒解雇」を例にして整理してみましょう。
先ず従業員は、労働契約を締結して雇用されることにより、会社に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を順守すべき義務を負います。一方で、会社は、この雇用する従業員の企業秩序違反行為を理由として、懲戒処分を課すことができます。
- 会社が従業員を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておく必要があり、就業規則の内容を、適用を受ける従業員に周知させる手続きを取っておくことが必要です。例えば、「会社内で窃盗、横領など犯罪に該当する行為があったときは懲戒解雇とする。」などと定めておくことになります。(事前準備として就業規則の定め)
- 労働契約法第15条では、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。(解雇権の濫用禁止)
- 労働基準法第20条では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。~以下略~」と定められていて、「30日前に解雇予告」をするか、「30日分の平均賃金(解雇予告手当)」を支払わなければなりません。(解雇手続きのルール)
ただし、労働基準監督署長の認定を受けることにより、解雇予告手当の支払いが免除される場合があり、上記の記事のように「横領」についても、極めて軽微なものを除き、認定を受けられるとされています。
以上のように、「懲戒処分」として「解雇」をする場合には「1.事前準備として就業規則の定め」「2.解雇権の濫用禁止」「3.解雇手続きのルール」という3つの条件をクリアする必要があります。労働者にとって生活をするうえでは「解雇=死刑」ということになりますから、厳格なルールが定められているのです。
また「解雇」は、会社から労働者に対する一方的な行為ですから、解雇の理由を巡ってトラブルになるケースも多く見受けられます。何らかの理由で「退職」というゴールに向かう方法としては、会社と労働者が話し合いの上で解決をする「合意退職」という方法が有益であることが多いです。
9月給与の注意事項
- 9月分保険料から健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額が、今年の算定基礎届を反映した額に変更されます。9月末退職者がいる場合は、控除する保険料にご注意ください。
- 10月から最低賃金が改定されます。東京は1,013円となる見込みで、とうとう1,000円を超えます。近年急激に最低賃金額が上がっていますから、最低賃金割れになる従業員様がいないようにご注意ください。
ひとこと
今月は、割愛させて頂きます。
(所長:細川 知敬)