細川事務所通信

平成28年6月号 Vol.59

同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 東京地裁判決

定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を払うよう勤務先の横浜市の運送会社に求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。佐々木宗啓裁判長は「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する」と認定。定年前の賃金規定を適用して差額分を支払うよう同社に命じた。

 労働契約法20条は、正社員のような無期雇用で働く人と、再雇用など有期雇用で働く人との間で、不合理な差別をすることを禁じている。弁護団によると、賃金格差について同条違反を認めた判決は例がないという。弁護団は「不合理な格差の是正に大きな影響力を持つ画期的な判決だ」と評価。定年を迎えた社員を別の給与水準で再雇用することは多くの企業で慣行として行っており、今回と同様の仕組みをもつ企業に波紋が広がりそうだ。

 判決によると、3人は同社に21~34年間、正社員として勤務。2014年に60歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用された。業務内容は定年前と全く同じだったが、嘱託社員の賃金規定が適用され、年収が約2~3割下がった。

 判決は「『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理だ」と指摘。この会社については「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」として、特段の事情はなかったと判断した。

 コストを抑制しつつ定年後の雇用確保のために賃下げをすること自体には「合理性はある」と認めつつ、業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているという証拠はないと指摘。「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」と述べた。

 会社側は「運転手らは賃下げに同意していた」とも主張したが、判決は、同意しないと再雇用されない恐れがある状況だったことから、この点も特段の事情にはあたらないと判断した。

 運送会社は判決について「コメントしない」としている。

朝日新聞デジタル 5月13日(金)14時57分配信

 今回裁判所が判断要素としたのは、労働契約法20条に定められている『①業務の内容及び責任の程度』『②当該職務の内容及び配置の変更の範囲』『③その他の事情』という要素です。

 これらに本件の事実内容を当てはめて、労働者ら(運転手)は会社の正社員との間に『①業務の内容及び当該業務に伴う責任の範囲に差異がなく』『②業務の都合により勤務場所や業務の内容を変更することがある点についても差異がなく』『③定年前後で職務遂行能力についての有意な差が生じているとは考えにくいため』特段の事情がない限り不合理なものとして評価せざるを得ないとしました。

 しかし定年後の再雇用に当たっては、雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」が支給されますが、これは再雇用後の給与減を補う制度です。つまり国も定年後に給与が減ることを前提に制度設計し法律を作っているのに、今回の判決はこれを否定することになるので不思議に思っています。

 我々が注意すべきなのは、契約期間の『有期か無期か』のみを理由として賃金格差を付けないようにすること。地裁判決のため、今後の高裁、最高裁での裁判所の判断が注目されるところです。

6月給与の注意事項

  1. 労働保険料の申告書が届きましたでしょうか? 一般事業所の労働保険料の年度更新の申告・納付期限は7月11日です。(提出期間は6月1日から7月11日)
    (パソコンから『労働保険年度更新に係るお知らせ』⇒検索で調べられます。)
  2. 6月の給与の支払いが終わりましたら、算定基礎届の準備をしましょう!!届出期限は7月11日です。(提出期間は7月1日から7月11日)

ひとこと

 6月に入るとそろそろ梅雨。ジメジメが終わると本格的な夏が来ますが、季節の変化に体調を合わせるのが大変ですね。今年も暑さに負けないよう頑張りましょう。

 さて今年も様々な事件が起こっておりますが、特に気になったのは三菱自工の燃費データ不正問題です。また起こってしまったかという感じですが、実はどの会社にも起こりうる事象なのかもしれません。

 今回の問題もそうですが「東芝の粉飾決算」の時も「旭化成建材の杭打ち偽装」の時も、報道では必ず『組織内部の物言えぬ雰囲気』があったとされます。

 一般的に会社組織と言った場合は「株式会社」や「有限会社」などを指し、これらは『営利企業』といって、少しでも多くの利益を上げることを目的としています。当然、社会情勢・経済情勢・その他の様々事情に影響を受けながらの運営となりますから、『いわゆる厳しい時』もあります。

 でも企業は誰のおかげで運営できるのか?他ならぬ顧客の支えがあって運営することができます。顧客の信頼を裏切るような『嘘』はいけないことですし、それを組織の長が率先して、周囲に耳を傾けなくなったらおしまい…、ただの息苦しい『ブラック企業』です。

 きちんと理由があることについては、物言える環境にすることが健全だと思っています。風通しの良い組織環境を保ってください。

(所長:細川 知敬)

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