企業間でやりとりする請求書の完全なデジタル化に向け、データ仕様を統一する取り組みが始まる。政府とソフトウェア企業など約50社が近く協議を開始し、2023年までに導入をめざす。会計や税に関する作業を効率化し生産性を高める。
日本のデジタル化は海外に比べて遅れている。電子商取引の利用率は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中で20位にとどまる。インド大手調査会社のインサイトパートナーズによると、世界の電子インボイス関連市場は19年で48億4千万ドル(約5千億円)で、日本は約1億6千万ドル。非効率な作業が多いと競争力に響く。
欧州連合(EU)は08年に請求書や受発注などの電子取引文書の仕様を決めた。スウェーデンやデンマークなどは政府と企業間の請求書のデジタル化を義務付け、イタリアは19年に企業も含めてすべて義務化した。米国は業界で仕様が異なるものの、政府の電子調達ではデジタル請求書の発行を推奨している。
日本も対策に乗り出す。企業が製品やサービスの代金を求める際に出す請求書は通常、紙の書類の郵送やメールで請求先に届ける。受け取った企業は自社のシステムの仕様に合わせてデータを入力し直す必要がある。
仕様が同じメーカーのソフトを導入していないと請求書データは自動的に会計システムと連携せず手間がかかる。大企業では業界内で同じ仕様の活用が進むものの電子で完結する取引先は2割程度とみられる。中小ではデジタル対応自体をしていない企業も多い。
23年10月からはインボイス制度が始まり、特に中小企業の負担が高まる見通し。消費税率10%と軽減税率8%の商品を区別し、請求書に税額や売上高を記さないと控除が受けられなくなる。
請求書データの入力・参照を各企業がクラウド上で進められるシステムを開発し、取引先への入金や領収書作成を自動的に進める機能も加える。
紙の保存を不要にする規制緩和はすでに実施されており仕様の統一でデジタル化が進む。企業は現在1枚の請求書に人件費やシステム費用で650円以上かけている。デジタル化で100円程度に抑えられそうだ。
中小向けに月数百円程度で使えるクラウドサービスも開発し政府は導入費用の補助を検討する。オンラインで可能な税務申告や、雇用保険、年金保険など行政向けの書類作成とも連動する。協議会が年内にも共通仕様を固め、22年秋から順次サービスを始める。
新型コロナウイルスの拡大を受け企業で在宅勤務の取り組みが広がっている。紙の書類のやりとりが壁になるケースもあり、コロナ対策を進める上でもデジタル化の推進が急務となっている。
政府は17日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)でデジタル化を急ぐ方針を掲げ、官民データ活用推進基本計画で請求書や領収書のデジタル化を明記した。行政手続きで問題が生じないよう政府も協議会と連携する。
2020年7月29日(水)18:00 日本経済新聞 電子版 より引用
今般のコロナ禍で日本のデジタル化の遅れは大いに露呈しました。国民1人に10万円の特別定額給付金の電子申請では申請する国民も行政も不慣れで混乱し、雇用調整助成金の電子申請はシステムトラブルで断念…。給付サービスについては、欧米などと比べると散々でした。
請求書はどんな事業でも作成するものなので、業務インフラとしては必須です。また働き方改革を進める上でも業務効率化が求められますから、上記の記事の取り組みが早く進めばと思います。国から一方的に提供されるサービスは、なかなか世間に浸透しませんが、民間企業が参加するサービスであれば、あっという間に社会に広がるのではないでしょうか。デジタル化の波に乗り遅れないように準備が必要です。
8月給与の注意事項
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今月は割愛させて頂きます。
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