福岡・北九州西労働基準監督署は、違法な賃金控除をしたとして、建設業の(株)******(福岡県********)と同社代表取締役を労働基準法第24条(賃金の支払)違反の容疑で福岡地検小倉支部に書類送検した。
同社は、令和元年6月~8月、労働者2人の賃金を天引きしていた。名目は、健康診断や道工具の修理などに充てるため。天引き額は、1人が月額2700円(3カ月計8100円)、もう1人が月額4000円(同12000円)だった。
併せて同社は、同年9月~10月、上記労働者2人に対して定期賃金を支払っていなかったとして、最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反でも送検されている。立件額は2人で2カ月合計約54万円に上る。
【令和4年2月4日送検】
2022年4月9日 労働新聞 より引用
(記事の一部表記を伏せさせて頂きました)
賃金の支払いには「賃金の支払いの5原則(労働基準法(以下、労基法という。)第24条)」というルールがあります。労基法第24条第1項では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされており、原則的に賃金は全額払わなければならないことになっています。
ただし以下の場合には、賃金の一部を控除してもいいことになっています。
- 法令に別段の定めがある場合
- 労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合
上記1.については、「所得税、住民税、雇用保険料、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料など」の法定控除と言われるものです。
上記2.については、法定控除以外のもので、例えば社宅や寮などの利用料、貸付金の返済金、社員旅行の積立金や親睦会費などを賃金から控除する場合は、「賃金の一部控除に関する協定書」という労使協定の締結が必要になります。
記事にもある「健康診断代金や道工具代」などは、法定控除以外の賃金控除にあたるので、労使協定の締結が必要です。
また労基法第24条第2項では、「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とされています。例えば「毎月15日に支払う」というように、毎月決まった日に支払う必要があります。2カ月に1度支払うというのも法律違反になってしまいます。 記事では「定期賃金の支払いがなかった」として、最低賃金法第4条違反にもあたっているようですが、使用者は最低賃金の適用される労働者に対しては、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
労基法24条に違反した場合、30万円以下の罰金を科される可能性がありますので注意が必要です。
賃金控除違反に限りませんが、法違反が発覚するのは、使用者と労働者との間でトラブルが発生しているケースが多いと思います。人は気持ちの動物ですから、先ずはトラブルが発生しないようお互いに配慮が必要です。
5月給与の注意事項
- 3月分(4月納付分)から健康保険料(東京都9.84→9.81%、千葉県9.79→9.76%、埼玉県9.80→9.71%)・介護保険料(1.80→1.64%)が変更になっています。
- 4月から雇用保険料率の2段階の料率改定があります。給与計算に影響が出るのは10月分(11月支払)給与からになります。年度更新では概算賃金の設定に注意しましょう。
- 住民税の特別徴収税額決定通知書が5月中に送られてきます。6月から住民税額が改定されますので、準備を行いましょう。
(所長:細川 知敬)