新型コロナウイルス感染症の第5波は沈静化する様子がなく、連日多くの方が新規感染したことが様々なメディアで報じられています。8月に入ってからは弊所にも、従業員が新型コロナウイルスに感染してしまったとのご連絡を頂くようになってきました。私たちにも新型コロナウイルスに感染してしまう危機が目の前に迫っていますので、より徹底した感染予防対策を心がけましょう。
今日はもしも「従業員が新型コロナウイルスに感染してしまったら」どうするか?について考えてみたいと思います。(今回は労働災害以外のケースを想定しています。)
【給料はどうすればいいの?】
従業員様が新型コロナウイルスに感染して仕事を休まなければならない場合は「欠勤」になりますから、労働契約に定められている給与(賃金)の支払いは不要です。
しかし給与が無くなったり、少なくなってしまうと、感染した従業員様の生活に支障が出てしまいますので、下記の制度の活用を検討しましょう
・年次有給休暇
・有給の特別休暇(会社に制度がある場合)
・傷病手当金
「年次有給休暇」は、出勤したのと同じ扱いになりますから、従業員様にとっては有利ですが、有休の残日数を確認して利用する必要があります。また、会社の就業規則などで「有給の特別休暇」制度が設けられている場合は、「年次有給休暇」と同様に利用することができます。
「傷病手当金」は、健康保険の制度で、「療養のため仕事をすることができない場合に、仕事をすることができない期間、給与の約7割の給付を受けられる」というものです。最初の3日間は「待機期間」といって給付が受けられません。傷病手当金の支給を受けられる期間は、最長で1年6か月となります。
新型コロナウイルスに感染してPCR検査の結果が「陽性」になると、傷病手当金の支給対象になります。「待機期間」の3日間は、年次有給休暇を使用しても大丈夫です。休業の4日目以降給与が支払われなければ、傷病手当金の支給を受けることができます。
また、傷病手当金は、原則として従業員様ご本人が請求して給付を受けるものですが、実際にお金をもらうまでかなりの時間がかかります。(療養の担当医師に休業証明をもらって、健康保険協会で審査された後に支払われるためです。)そこで、給与の支払いと同時期に傷病手当金の給付予定額を会社から従業員様に立替払いしてあげて、実際の傷病手当金の受け取りを会社ですることも可能です。(あくまでも、従業員様の同意がある場合に限られます。)まずは、従業員様が安心して休めるように、利用できる制度を理解して、事前に説明しておけると良いと思います。
【感染拡大防止のための措置は?】
社内から新型コロナウイルス感染者が出た場合は、他の感染者や濃厚接触者がいないかを確認する必要があります。まずは、管轄の保健所に連絡をして対応について指導を受けます。その結果、感染者は休業、濃厚接触者は自宅待機などを命じます。
どこまでを公表するかは、感染した従業員様の個人情報になるため、とても難しい問題ですが、「感染者が誰なのか」「いつごろ発症したのか」など、社内での感染拡大防止や安全配慮義務の面から一定の判断が必要になります。
また社内での感染拡大防止措置のほかに、取引先などへの二次感染防止の対応なども問題になります。新型コロナウイルスに感染したことは要配慮個人情報(健康情報)に該当して、原則として、本人の同意を得なければ第三者に提供できないようです。しかし感染予防のために迅速な対応をするのに同意を得ることが困難な場合は、やむを得ないケースも出てくるかもしれません。(個人情報保護法の例外事由に該当して、同意がなくても情報提供できる場合)
少しでも心の準備ができれば幸いです。
9月給与の注意事項
- 9月分保険料から健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額が、今年の算定基礎届を反映した額に変更されます。9月末退職者がいる場合は、控除する保険料にご注意ください。
- 10月から最低賃金が改定されます。東京都1,041円、千葉県953円、埼玉県956円となります。近年急激に最低賃金額が上がっていますから、最低賃金割れになる従業員様がいないようにご注意ください。