新型コロナウイルスの感染拡大下で雇用を維持するために導入された雇用調整助成金(雇調金)の特例措置が長期化し、政府が「出口戦略」を模索している。欧米に比べて失業率を低く抑える効果があった一方、その分支給額が膨らんで財源の枯渇は深刻だ。転職意欲をそぎ、人手不足に悩む業界や中小企業に人材が移動しない一因にもなっていると、特例の見直しを求める声が上がっている。
厚生労働省は20日、今月17日までの支給決定額が2020年春の特例開始から累計で5兆8159億円に達したと発表した。雇調金は、業績が悪化した時などにも従業員を解雇せず、休ませた企業に休業手当の一部を支給する制度。現在は、特例として上限額を1人当たり日額1万5000円、助成率を最大100%に引き上げている。
これらの雇用維持策により、日本の失業率は悪くても3%台前半にとどまった。その一方で、雇用保険全体で約6兆円あった積立金はほぼ枯渇。一般会計からの投入に加え、今年度の雇用保険料率を引き上げるなどして対応している。
政府は9月末まで特例措置を延長する方針を決めたが、財源不足を背景に厚労省内などでは「いつまでも続けるわけにはいかない」(幹部)との意見が大勢。今秋以降、助成率の引き下げも視野に「正常化」へかじを切りたい考えだ。
支給額が膨らんだ裏返しで、休業者は20年平均で256万人と、比較可能な1968年以降で最多を記録した。21年平均も206万人に上った。厚労省幹部は「労働者がスキルアップする機会を奪っている可能性がある」と危惧する。
今年4月の有効求人倍率は4カ月連続で改善し、失業率はコロナの影響が本格化する前の水準を取り戻した。製造業の新規求人数が14カ月連続で前年同月を上回るなど、幅広い産業で人手不足感が強まっている。
雇用情勢の回復とともに、これまで雇調金の特例延長を訴えてきた中小企業団体も政策の転換を求め始めた。日本商工会議所の関係者は、人手不足が中小企業の経営に影を落としているとして、「雇用維持も重要だが、人手不足や成長産業への円滑な労働移動に向けた世策も推進してほしい」と漏らす。
労働経済学が専門の酒井正法政大教授は、「雇調金自体に雇用を回復させる力はない。出口戦略が必要な時期に来ている」と指摘する。
2022年5月29日 読売新聞オンライン より引用
約6兆円弱の支給がなされた雇用調整助成金は、リーマンショック期の支給実績(平成21年度:6536億円、平成22年度:3249億円)と比べておおよそ6倍も多かったようです。コロナが始まってから今日まで、雇用調整助成金のお陰で雇用維持をしてきて、今年5月の完全失業率は約2.6%と低い水準を保っています。リーマンショック期の2009年7月頃の完全失業率は約5.5%で完全失業者数は364万人でした。
しかし記事にもあるように、今秋以降は、雇用調整助成金の特例も縮小傾向になり、体力のない企業から労働移動が始まる可能性が高くなってきます。最近は弊所でも様々な業種のお客様から「人手が足りない」という言葉をとてもよく聞きます。ロシアによるウクライナ侵攻により物価が高騰し景気の悪化も懸念されていますが、人手不足を感じている企業で上手く労働移動の受け皿になってもらえれば幸いです。
また今年は雇用保険料率が2段階で引き上げられます。4月からは「一般の事業で9.5/1000、建設の事業で12.5/1000」と0.5ポイント上がり、10月からは「一般の事業で13.5/1000、建設の事業で16.5/1000」とさらに4ポイント上がります。ちょうどリーマンショック後の10年ほど前も同じくらいの水準だった記憶がありましたが、調べてみるとその頃は「一般の事業で15.5/1000、建設の事業で18.5/1000」ともう少し高い水準の雇用保険料率でした。
変化のある時は、チャンスの時でもありますので、より多くの視点から準備を整えておくことが大切だと思います。
7月給与の注意事項
- 一般事業所の労働保険料の年度更新の申告・納付期限は7月11日(月)です。(提出期間は6月1日から7月11日)
- 6月の給与の支払いが終わりましたら、算定基礎届をしましょう!!届出期限は7月11日(月)です。(提出期間は7月1日から7月11日)
- 源泉所得税の納期の特例承認を受けている場合は、7月11日が「1月から6月までの源泉所得税」の納付期限になります。
(所長:細川 知敬)