細川事務所通信

令和4年1月号 Vol.126

労働基準法の一部を改正する法律等の施行について(消滅時効等)(厚生労働省)

 厚生労働省は、令和2年4月1日、労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号。以下「改正法」という。)及び労働基準法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第76号)の施行により、賃金請求権の消滅時効期間を2年から5年(当分の間は3年)に延長する等がなされています。  施行から2年が経過する令和4年度を迎えるにあたり、改正法の適切な施行のため、令和2年4月1日以降に発生した賃金請求権等については、令和4年3月31日以降ではなく、令和5年3月31日以降に消滅時効が完成することなどをより周知できるよう、改正法に関するリーフレットを別添のとおり改訂しました。  詳細につきましては、以下の参考資料等をご参照ください。

【改正内容(令和2年4月1日施行)】

  1. 賃金請求権の消滅時効期間の延長(労基法115条) 賃金請求権の消滅時効期間を5年(旧法では2年)に延長しつつ、当分の間は3年とする
  2. 賃金台帳などの記録の保存期間の延長(労基法109条) 賃金台帳などの記録の保存期間を5年(旧法では3年)に延長しつつ、当分の間は3年とする
  3. 付加金の請求期間の延長(労基法114条) 付加金を請求できる期間を5年(旧法では2年)に延長しつつ、当分の間は3年とする
  • 例)2020年4月1日に発生した賃金請求権の場合:旧法に基づく2年経過の2022年3月31日には消滅時効は完成せず、3年後の2023年3月31日に消滅時効が完成することとなります。

2021年12月22日11時47分 日本商工会議所ホームページ より引用

 これからの問題なのであまりメディアにも取り上げられていないのでしょうか。例えば、今から2年前の日付は「令和2年1月1日」なので、上記記事の「改正法」はまだ施行されていませんから、賃金請求権の消滅時効は、「旧法の2年」が適用されることになります。令和4年4月以降に改正法の適用例が出てきます。賃金を労働者に支払う立場の事業主にとっては、とても重要なことなので、確認しておきたいと思います。

 例えば、「1日7時間労働、休日は毎週日曜日のみ、月給40万円」の雇用契約の場合、「7時間×6日勤務=42時間労働」となります。労働基準法では、1日8時間労働(休憩時間を除く)1週間40時間労働(休憩時間を除く)の規制をしており、例題の雇用契約の場合、「毎週2時間の時間外労働」が発生することになります。

 労働基準法の労働時間規制から導かれる年間総労働時間(365日÷7日(1週間)×40時間(労基法)≒2,085時間)を用いた場合、この雇用契約での賃金の時間単価は「約2,312円/時間」となり、時間外労働の割増率を用いた場合「約2,890円/時間」となります。その差額は「約578円」で、毎週2時間の時間外労働が発生すると「約1,156円」、1カ月を約4.5週間とすると「約5,202円」の割増賃金の支払いが本来必要になります。

 毎月、約5,000円の賃金の未払いが発生していると、「年間60,000円」「2年間120,000円」の未払い賃金があることになります。改正法が適用されると「3年間180,000」の未払い賃金、改正法の特例措置がなくなった場合、「5年間300,000円」の未払い賃金があることになります。賃金請求権は、労働者の正当な権利なので請求されたら支払わなければなりません。

 仮に上記に該当する労働者を10人雇用していた場合、問題なく対応できるでしょうか。自社の雇用契約の内容と賃金計算方法を、改めて確認してみてはいかがでしょうか。

1月給与の注意事項

  1. 源泉徴収税を半年に一度の納付にされている会社は、令和元年7月1日から令和元年12月31日までに徴収した源泉所得税を1月20日までに納付して下さい。
  2. 給与支払報告書の提出は1月31日までです。
  3. 労働保険料を分納している場合、第3期の納付期限は1月31日までです。(労働保険事務組合に業務委託されている事業所の場合は、1月20日に労働保険料の口座振替があります。)

(所長:細川 知敬)

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