細川事務所通信

令和5年8月号 Vol.145

逮捕の猿之助氏 殺人ではなく親の自殺の手助けだと相続や保険金はどうなる?

 母親の自殺を手助けしたとして逮捕され、父親の死への関与についても捜査が進められている市川猿之助氏。こうした事件は、その推移によっては相続や生命保険の保険金にも影響を与えることになる。猿之助氏の事件のケースに関し、今後考えられる可能性についてまとめてみたい。

相続はどうなる?

 すなわち、猿之助氏の両親にはほかに子がいないため、父親の遺産の法定相続人は母親と猿之助氏、母親の遺産だと父親と猿之助氏になる。両親の遺言はなかったというから両親が他界した順序がどうであれ、本来であれば2人の遺産は猿之助氏が全て相続するはずだ。

 しかし、民法の「相続欠格」と呼ばれる規定により、故意に被相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた場合には、相続人になることができない。

 死の結果に対する「故意」が必要なので、傷害致死罪や過失致死罪は除外されるものの、「死亡するに至らせ」とか「至らせようとした」という条文だから、殺人罪だけでなく、嘱託・承諾殺人や自殺教唆罪、自殺幇助罪、それらの未遂罪も含まれる。

 「刑に処せられた」とは、有罪判決を受け、懲役刑などの言い渡しを受けて確定したことを意味する。執行猶予判決か否かを問わない。したがって、たとえ猿之助氏が殺人罪ではなく自殺幇助罪で立件、起訴されたとしても、有罪判決を受けて確定したら、相続人になれない。その効果は、相続開始時にさかのぼって生じる。

 猿之助氏には子がいないから、猿之助氏に代わって相続できる「代襲相続」と呼ばれる制度も適用されない。ほかに相続人がおらず、両親の遺言もなく、その療養看護に努めるなど特別に縁故があった者もいないということになれば、両親の遺産は国庫に帰属する。

 ただし、猿之助氏に執行猶予が付き、何事もなくその期間を経過すれば、刑の言い渡しの効力がなくなるから、その段階で相続人の資格を回復することができる。実兄になるか否かも重要となる。

~中略~

 猿之助氏は、出演した映画の公開延期やドラマの放映中止などにより、配給会社などから莫大な損害賠償請求を受けるとみられる。いかなる経緯や状況で事件が生じたかによって相続や保険金の行方をも左右するから、警察としても、適用する罪名の見極めを含め、慎重に捜査せざるを得ないというわけだ。(了)

2023年7月1日(土)9:35配信 YAHOOニュースから引用

今回の騒動は市川猿之助さんに関するパワハラやセクハラなどの記事が週刊誌に掲載されることがきっかけになったと報じられています。その後の行動を見ても、なかなか他人の頷けるような話ではないなと思えます。

現在は両親の自殺幇助の容疑で逮捕されているとのことです。記事にもあるように「自殺幇助罪」になると故意に死に至らせたことになり、相続人になれないようです。執行猶予がついた量刑となれば、何事もなくその期間を経過すれば刑の効力がなくなり、相続人になる余地があるようですが、立件されて2件の自殺に関与したということになれば、懲役が3年を超えて執行猶予のつかない実刑判決になる可能性が高く、実際に似たような判例があるようです。

生命保険金の場合も、例え保険金目当ての殺人ではなくても、故意に死に至らせたということであると保険金が支払われる可能性はほぼないのではないでしょうか。

聞けば知らない人はいないほど社会的に影響のある方が、全てをなくしても仕方ないと思うほど、パワハラやセクハラは破壊力が強いです。少しでも心当たりがあればすぐに改めるべきです。

8月給与の注意事項

  1. 標準報酬月額決定通知書(算定基礎届の結果通知)が届いたら、内容を確認したうえで、9月からの標準報酬月額の変更の準備をお願い致します。
  2. 夏季賞与の支払いがある場合は、賞与支払届の提出をお忘れなく。

(所長:細川 知敬)

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