細川事務所通信

平成29年2月号 Vol.67

<セブン加盟店>バイト病欠で罰金 女子高生から9,350円


 コンビニエンスストア最大手、セブン-イレブンの東京都武蔵野市内の加盟店が、風邪で欠勤したアルバイトの女子高生(16)から9,350円の「罰金」を取っていたことが分かった。セブン-イレブン・ジャパンは「労働基準法違反に当たる」として、加盟店に返金を指導した。

 親会社セブン&アイ・ホールディングスの広報センターなどによると、女子生徒は1月後半に風邪のため2日間(計10時間)欠勤した。26日にアルバイト代を受け取った際、給与明細には25時間分の2万3,375円が記載されていたが、15時間分の現金しか入っていなかった。手書きで「ペナルティ」「9,350円」を書かれた付箋が、明細に貼られていた。

 店側は「休む代わりに働く人を探さなかったペナルティ」として、休んだ10時間分の9,350円を差し引いたと保護者に説明したという。

 広報センターの担当者は毎日新聞の取材に「加盟店の法令に対する認識不足で申し訳ない」と話した。「労働者に対して減給の制裁を定める場合、減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない」と定めた労基法91条(制裁規定の制限)に違反すると判断したという。

 厚生労働省労働基準局の担当者は「代わりの人間を見つけるのは加盟店オーナーの仕事」と話す。母親は「高校生にとっては大金。立場の弱いアルバイトが差し引かれ、せつない」と語った。

毎日新聞1月31日(火)7:00配信

 病気欠勤という休んだ本人がどうにもできない状況下での対処としては、「代わりの人間を見つけるのはオーナーの仕事」と言われても仕方ありません。トラブルにも対処できる人材配置は、やはり会社側の責任かと思います。もう一つの観点としては、近年は全国的に人手不足となっていること。労働者に対して柔軟な対応ができる会社でなければ、人材確保することがとても困難な時代なっていきます。

 今回は、会社で「罰金ペナルティ」を課す場合の注意点を確認しておきましょう。

【給与天引きは違法】

 大原則として、罰金の理由や金額を問わず、給与から罰金を天引きすることは違法です。労基法24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めており、会社は賃金を全額支払う義務があります。この原則に反した場合、使用者は刑事罰を受ける可能性もあるので、注意が必要です。

【懲戒規定を利用した罰金】

 会社は就業規則の中で「減給の制裁」を定めることができますが、その濫用を防ぐために労基法91条で縛りがかけられています。「減給の制裁」はあらかじめ会社のルールとして定められている制度なので、上記の「天引き」とは異なります。

 合法的な運用をするためには、就業規則の中で懲戒事由とその制裁の種類および程度が定められている必要があり、ルールを定めないで「懲戒する(罰する)」ことはできないのが大前提です。

 次に、定めた就業規則の内容が合理的であることが求められます。たとえ不合理な内容の「ルール」を定めたとしても、そもそもそんなものは「無効」であると判断される可能性が高いです。

 そして労基法91条では、「1回当たりの減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が月給の10分の1を超えてはならない」と、金額面で縛りをかけています。

【損害賠償的な罰金】

 会社が労働者に対して、損害賠償を請求すること自体は違法にはなりません。ただし、そもそも人間だれしも失敗はあるもので、故意に会社に損害を与えた場合でない限りは、労働者に賠償責任が発生するかは疑問です。もし損害賠償請求する場合でも、「正当でない請求を、しつこく、あるいは威圧的・暴力的に」行うと、「強迫」や「詐欺」になってしまう可能性があるので注意が必要です。

 間違った行いに「制裁を課す」ことは、組織を引き締めるためには必要だと思います。ただし、「必ずルールを守ったうえで、やり過ぎない」ことが重要です。

2月給与の注意事項

  1. 特に注意事項はありません。

ひとこと

 立春を迎え、ようやく暦の上では春になりますね。 とは言え、実際にはまだまだ寒い日が続きますが…。インフルエンザなどにかからないよう、体調管理には十分注意して生活したいですね。

 さて1月31日に厚生労働省から、有効求人倍率が発表されました。「1.43倍」という数値で、1991年7月以来、25年5か月ぶりの高水準とのことでした。求人票を受理したハローワークごとの受理地別では、最高が東京都の「2.05倍」、最低が沖縄県の「1.02倍」とのこと。

 気になるのは今後「働く人が減る」ということ。15年ほど前は、就職氷河期などと言われて、仕事が全然見つからなかったのに、今は逆に仕事が余ってきています。会社などの組織運営をするにあたっては、その時代ごとの対処方法が求められますが、今後は人を「大切に」「育てる」ということが、とても重要になってくる気がしています。

(所長:細川 知敬)

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